伝統工芸の美しさに触れる
金沢には、さまざまな伝統工芸があります。 これは江戸時代に加賀を治めていた藩主が、徳川幕府対して感謝の気持ち、そして江戸幕府に歯向かう意思がないことを示すために、伝統工芸に力を入れていたためです。 そのなかでも、とくに知名度が高い伝統工芸について解説します。
職人の技術が必要な 『折上格天井』
加賀友禅
最初に紹介するのは、京都の京友禅、東京の江戸友禅と合わせて、日本三大友禅と呼ばれることもある加賀友禅です。 加賀の国に既にあった梅染という染め技法を原点とし、魅力ある美しく新しい模様が生み出されています。 加賀友禅の特徴は、加賀五彩といわれる臙脂、藍、黄土、草、古代紫などの色を基調にして描かれる、花や植物、風景など自然をモチーフにした写実的なデザインです。
ほかの友禅と比較すると落ち着いた色調で、武家風の気品があるといわれています。 また、ぼかしや虫食いと呼ばれる技法が多く使用されているのも特徴です。 これらの技法によって、加賀友禅に描かれた柄に立体感やリアリティが生まれます。 高い技術とその優美な模様は今現在も継承されており、加賀友禅に魅入られたファンも少なくありません。
加賀友禅
九谷焼
続いて紹介するのは、九谷焼です。 九谷焼とは茶人としても知られる加賀藩主、前田利治のもとで作り始められた磁器のことで、
陶石の産地となった九谷村にちなんで、九谷焼と呼ばれるようになりました。 1701年頃に一度生産がストップしており、この時期以前に生産されたものを古九谷といいます。 1806年に九谷焼の生産が再開されますが、約100年の間、
なぜ九谷焼の生産が中止されていたのかは、よくわかっていません。 金沢九谷は細密画と盛絵の具、そして独特の赤が特徴です。 山水、花鳥など絵画的で大胆な上絵付けによる装飾が美しく、窯によって作風が異なります。 そのため、皿や茶碗として利用するのはもちろん、お土産や装飾品としても人気が高いです。
五名の若手九谷作家の作品
金沢和傘
金沢和傘とは、金沢でつくられている和傘のことです。 最盛期には100軒以上の和傘屋が金沢に存在していましたが、洋傘の普及によって和傘の製造は激減しています。 現在金沢和傘の制作を行っているのは、1896年創業の松田和傘店のみとなっています。 金沢和傘の特徴は、雨や雪の重みに耐えられる丈夫な構造、そして美しさを兼ね備えている点です。 そのため、現在では和傘の購入者の9割が県外、および外国人となっています。 観光客向けにミニ傘つくり体験も実施されているため、興味を持った人はぜひ参加してみてください。
金沢和傘
輪島塗
福島の会津塗、和歌山の紀州塗と合わせて、日本三大漆器と称されるのが輪島塗です。 その名のとおり石川県輪島市で作られている漆器で、重要無形文化財にも指定されています。 原料となる漆の木や、器のベースとなるケヤキやアテの木が豊富にあることから、輪島塗が発展しました。 起源は諸説ありますが、現在の輪島塗に近い形態になったのは1630年頃といわれています。 輪島塗は見た目の美しさのみならず、傷んでも修理が可能な点が特徴です。 そのため、世代を超えて長く、そして大切に使用されています。
輪島塗
金沢金箔
金沢金箔とは、金沢周辺で生産されている金箔のことです。 第二次世界大戦中に金属類の使用制限によって一時壊滅状態になりましたが、戦後に復活し、現在では全国における金箔生産量の99%以上を金沢金箔が占めています。 箔づくりには、純金に微量の銀、銅を加えた合金が使用されており、10円玉ほどの小さな金合金をたたみ一畳ほどの大きさまで均一に、しかも輝きを失うことなく延ばす技術は、神業といっても過言ではないでしょう。 製造された金箔は漆工芸をはじめ、仏壇仏具や織物、九谷焼など、さまざまな分野で利用されています。
建築様式
金沢は、戦火を免れた数少ない都市のひとつです。 そのため、現在でも伝統的な建築物が多数残されています。 代表的なものが、美しい出格子と、2階を高くして座敷を設けた構造が特徴の茶屋建築です。 多くの茶屋建築が建ち並んでいるひがし茶屋街は、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。 かつてわずかな上流町人にのみ許された社交の場で、当時の雰囲気を楽しんでみてはいかがでしょうか。
金沢三茶屋街「ひがし茶屋街」
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