金沢建築の一番の特徴に朱塗りの壁があります。
赤色は顔料の弁柄(べんがら)によるもので、
温かみがあり、艶やかな印象を
感じさせる色になっております。
のとやも、江戸時代よりお部屋の壁は、
朱塗りの壁を多く利用しました。
雪国の金沢では雨の日も多く、冬になると
雪が積もりモノトーンの日々が続きます。
そのため生活する人を明るくするために、
漆や朱肉を使い彩を豊かな生活になるように
いたしました。また「建物を明るくして
お客様をもてなしたい」という、金沢の人の
おもてなしの心から始まったとも言われており、
ひがし茶屋街や大きな町家、豪農の客間は
朱塗りの壁が多く使われています。
金沢で県外から来たお客様が驚かれるのが、
真っ青な壁、群青の壁面のお部屋でしょう。
加賀百万石13代藩主・前田斉泰公が建築した、
成巽閣に見られる群青の間の天井が
ルーツと言われております。
この群青色は当時、ヨーロッパでは
世界で最も美しい群青色とされた天然鉱石
「ラビスラズリ」という宝石から作られたもののため、
大変に貴重なもので、金箔より高級と
言われておりました。1982年に天然と遜色のない
合成顔料が発明されると、前田家では長崎に
家臣を常駐させて輸入品を買い付け、
それを金沢に持ち込んで成巽閣の壁に
使ったと考えられています。
のとやでは、金沢懐石や新鮮な日本海の海の幸、
日本海側ならではの発酵食品や地酒を
楽しんでいただけますが、ソフト面だけでなく、
建物の建築美、伝統美も楽しんでいただければと
工夫を凝らしております。
お客様をお迎えする玄関には、
折り上げ格天井や弁柄朱塗り壁、食事処には、
一番気品があると言われます群青の壁を取り入れ、
お食事を楽しみながらゆっくりと
見ていただけるようにしました。
館内散策も金沢の伝統文化を楽しめる、
宿泊の醍醐味の一つとなっております。